江ノ島フリッパーズ、出航。

 
開幕戦の当日、グラウンドに着くまで落ち着きませんでした。



試合の前の晩、もしかしたら登録に漏れがあったんじゃないかと、急に不安になってきました。詳細は省きますが、ここまであれこれ手探りでやってた登録の手続きで、ちょっと不安な点が出てきてしまったのです。もし試合に出られない人がでたらどうしよう?と思い始めたのです。
パソコンをのぞいたり、連絡をとりあったり、協会のごちゃごちゃいろいろ書かれてある冊子を見直したりしたんですが、答えは出ません。
「明日、試合前に本部で聞こう」
ということで、寝ることにしました。
選手たちも盛り上がっているのに、ここまできて試合に出られないなんて申し訳ない。そう、責任を感じて落ちこんでいるかみさんに、僕の方が申し訳ない気持ちでした。



まあ、ともかく少し早めにグランドに行ってみようと、午前中に練習試合を観戦した専修大グラウンドから、金沢区の三菱グラウンドへ向かいました。



グラウンドでは、二試合前のゲームの真っ最中でしたが、見回しても本部らしきものは見当たりません。僕は、グラウンドに着いてからの短い時間に、なんとなくですが「ああ、こういうところから始まるんだなあ」と、いろんな意味で感動していました。それこそ、心配事はそっちのけで。




社会人サッカーのことを意識し始めたのは、長男が大学一年の時。馬入で、神奈川県の国体チームのセレクションを観戦した時だったと思います。
社会人リーグの存在ももちろん知っていましたし、高校を卒業してしばらくして、東京の北区リーグみたいなところで、少しプレーしたこともありました。だけど、馬入で目の前でプレーしている選手たちは、そのレベルとは、相当に違います。「あのちょっと太めの中盤の選手、上手いでしょ?マリノスのトップチームにもう少しで入れそうだった人なんですよ」そう教えてくれたのは、隣で観戦していた紳士。話の流れで名刺をいただいたのですが、厚木マーカスの強化担当の方でした。




Jリーグ開幕20周年だそうですが(開幕戦、行ったんだよなあ)、自分の国にプロサッカーリーグがあるんだという感慨はひとしおなんだけど、その頂点ができたばかりに、現実を見誤ったかのようなサッカーママやパパが増えたことには、ちょっと疲れる思いも何度かしました。
スペシャルだかなんだか知りませんが、Jクラブのそういう特別な教室に受かったとか、落ちたとかが関心の中心で、肝心のプレーには特に興味なし。あったとしても、勝ったか負けたか。点をいれたかどうか…。プロサッカーリーグはできたかもしれないけど、もっと、サッカーが好きな人が増えないかなあ、と今も思い続けています。




そういう大人の責任なんだかどうか知りませんが、僕が知り合ったサッカー少年たちも、中学、高校と、サッカーを続ける子は決して多くはありません。とてつもない夢が、どうも叶いそうもないとなると、さっさとやめてしまうのかよ、なんて勘ぐりたくなってしまいます。

親だけでなく、僕たち町の指導者も責任を感じなくてはいけないのかもしれません。。
となり町のクラブに勝ったとか負けたとか、判定がおかしいとか、トレセンに何人入ったとか、なんで、あいつが落ちたんだとか。ちょっとうまいとチヤホヤ。さんざ甘やかしておいて、生意気になって手に負えなくなると「親が悪い」と放り出す。
もっと大切に、丁寧に子供達に接している指導者も間違いなくいます。でも、自分はどれだけできていたんだろう?…振り返るとつらくなります。



上へ上へと向かうにつれて、やめてくだけじゃなくって、どんどん削られてって、あれだけいたサッカー少年たちは、どこ行っちゃったんだろう?そんなことを素朴に思っていたんですが、
「ああ、こんなとこにいたんだ。」
と、大学生と戦う県内の社会人選手達を見て、ちょっと涙がでそうになったことを覚えています。

グラウンドの横を、なんちゃらスクールを終えた子供達とその親が特に興味も示さずに通り過ぎて行きました。




「あの審判服の人に聞いてみよう」
なにか、とてもちゃんとしたたたずまいの方がいたので、かみさんと、藁をもすがる気持ちで、おそるおそる声をかけてみました。

「大丈夫。ぜんぜん問題ないです。」

笑いながら親切にそう教えて下さった方は、実は僕たちがオープニングゲームで対戦する、瀬ヶ崎ラウレアートの代表の方だったのです。「自分たちが指導した子供達が大人になって、また一緒にサッカーしようってやってるんです。」監督さんと一緒にそう僕たちに話してくれました。
この代表の方、主審を務められた後に、キーパーとして一試合フル出場。信じられません。試合後には、汗びしょの笑顔で「50男をあんまりいじめちゃだめですよ」と、握手をして頂きました。おかしな表現かもしれませんが、すべてにおいて「オレより上だあ」と思いました。リスペクトしまくりです。本当にありがとうございました。




まあかくして、フリッパーズの航海は始まりました。
ホント、始まったばっか。そういう感じです.