王様は裸だったんだ

9歳まで二本松市、18歳まで福島市で育ちました。
なんだか呑気にぼよよんと覇気のない土地柄で、大きな災害も犯罪もないのは有り難いけれど、日本の中でもどちらかと言えばマイナーな県。
私はちっとも好きでなく、出ることばかり考えていました。
福島を出てからも、めったに帰らないし特に自慢というわけでもないし、やっぱり相変わらず郷土愛は薄いようです。



その福島が、こんな惨事で名を轟かせることになろうとは、もちろん露ほどにも想像したことはありませんでした。
浜通り」「中通り」「会津地方」という、福島県民ならば誰でも毎日天気予報で耳にし馴染んでいる県内の呼び名も、県外に出れば「なにそれ?」と知る人などなく、全国放送のアナウンサーですら読めなかったりしたのに、今ではアナウンサーで間違える人はまずいません。



原発が出来るという時にはもちろん反対運動もあったわけですが、炭坑閉鎖後のめぼしい産業や職のない地域にとって、原発がもたらしてくれる職場やお金や最新の「科学技術」の謳い文句が、少なからず輝いて見えたことだってあったかもしれないことを、誰にせめられるでしょうか。
しかし今、建設される時に危惧されていた中でも最悪に位置づけられる事態が、現実になっています。
強固な安全神話で封じ込められてきたいろいろなことが、嘘だったということです。
王様は裸だったんだ!



失ったもの、これからも失い続けるかもしれないものは、あまりにも大きいです。
それは福島だけのことではないし、原発だけでもありません。自分のいるところさえよければいいのでもありません。
遅いかもしれないけど、気がついた時が一番早い時。なんとかしていくしかないです。それぞれが出来ることから。
(A)