首を洗って

本日、離任式がありました。
どの先生の挨拶もそれぞれに思いがこもり、決して退屈することはありませんでしたが、4〜50分が経過していたので、体育館の床に体育座りしている生徒たちの体はごわごわに固まってきていました。
自分の挨拶の順番が回ってきた彼はマイクを手に持ち、全校生徒を睨みつけるように眺め渡し、いつもの有無を言わせぬ太い声で「起立!」と号令。
全員が立ったところで、「では屈伸。1、2、3、4…」と始めると、生徒たちが「5、6、7、8…」が続けます。そう、いつものように。



彼はひと通りこの学校でのこれまでを話したあと、
「今度はA高校へ行きます。A高校のサッカー部は、あと少し、あと少しで…藤沢清流に勝ちます」
「目標は、県で優勝すること。だから、どこかで必ず藤沢清流に当たります。そして勝ちます。弱い清流には勝ちたくない。強い清流を倒して全国へ行きます。首を洗って待ってるように」




彼からの1本の電話が、兄の高校サッカーの始まりでした。
6コ違いの弟は、小学校4年生〜6年生まで、その兄を見ていました。結局兄のチームが全国出場を果たせず引退した時から、「俺がT先生を全国へ連れていく」と言い張り、ほかの選択肢に揺れることはありませんでした。
ついに念願かなって昨年、T先生のチームへ。1年間、鍛えられました。







しかし、今年、先生は異動されることに。
弟は異動の話を聞いて帰った夜、部屋に籠って出てきませんでした。
弟も、先生も、チームメイトも、親たちも、思うことはいろいろでしょう。つらい別れです。
でも今日、先生への色紙に書いたそうです。
「これからはライバルです。絶対負けません」




桜がちらほら咲き始めています。
また、次のシーズンが始まります。


(A)